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撹拌

撹拌は化学工業において基本的な操作ですが、感覚的な判断や経験的な判断に頼ることが多くなりがちです。科学的な知識を理解しておくことで、スケールアップや新規設備導入などで役立ちますので、ここでまとめておきます。

 

撹拌層内の流動

  1. 旋回流:撹拌機に対して円周方向の流れ。通常意識している流れだと思います。撹拌翼の先端部付近が旋回流の速度が最も早くなります。邪魔板をつけることで全体的な旋回流は減少し上下循環流、放射流が強くなります。
  2. 上下循環流:撹拌機の回転方向に対して垂直方向の流れです。撹拌層壁がもっとも流れが速くなります。邪魔板をつけることでより上下循環流が大きくなります。
  3. 放射流:撹拌機の軸から撹拌層壁への流れ。撹拌翼付近が最も速度が速く、撹拌翼から上下方向に離れていくにしたがい速度は減少します。邪魔板をつけることで流れが強くなります。

撹拌の作用

撹拌のエネルギーは主にせん断作用と吐出作用に変換されます。せん断作用が強い撹拌翼は吐出作用に劣り、せん断作用が劣る場合は吐出作用が強くなることが多いです。

せん断作用は分散能力に影響し、エマルジョンの乳化、ポリマー成分を溶剤に希釈するようなディスパージョンなど液滴や気泡の微細化などに効いてきます。

吐出作用は循環能力です。混合時間、伝熱など反応速度に特に効いてきます。

 

撹拌翼の種類

タービン翼:吐出能力よりせん断能力に優れる撹拌翼。固体粉砕や分散に適している。中程度の粘度まで使用され、応用範囲は広い。乳化や乳化/懸濁重合、抽出、ディスパージョン、気液反応等に用いられる。

 

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プロペラ翼:中粘度(3000mPas程度)までの液体に使用される。タービン翼に比べると吐出能力が高い。液液系の混合、温度均一、液固径のスラリー沈殿防止に使用される。分散等には不向き。

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パドル翼:プロペラ翼よりも吐出に優れ、せん断に劣るタイプの翼。構造がシンプルなため安価。用途としてはプロペラに似て、液液系の混合、温度均一、液固径のスラリー沈殿防止に使用される。50000mPas程度の高粘度液体にも対応できる。

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アンカー翼:ほぼせん断はなく、吐出能力のみの撹拌翼。高粘度まで使用可能。軸付近の流れがほとんどないため混合には不適だが、壁面の流れはだすことができるため、ジャケット伝熱や晶析によく使われる。アンカー翼の課題を解決したものがリボン翼だが、アンカー翼は安価で、特別な製造の要件がなければ採用されることも多い。30万mPas程度まで使用可能。

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リボン翼:アンカー翼同様せん断はなく吐出がメインの撹拌翼。アンカー翼の課題である軸方向の流れを作り出せるように斜めの羽がついている。こちらも高粘度まで対応。

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参考 

www.aoki-kk.co.jp

 

www.shi-pe.shi.co.jp